いろいろなコンクリート構造物の耐用年数が過ぎてきた頃でしょうから、今後、各地で同様のことが起きそうです。
崩れてしまった場合の責任は、擁壁の設置してある土地の所有者の工作物責任ということになるでしょう。
今回のニュースでは物置が倒壊ということですので、まだ不幸中の幸いでしたが、家が倒壊したとなると、家の価値(築年数等で評価)、土砂の撤去費用等々、賠償額はかなりのものになってしまうでしょう。
ネット記事には、火災保険の対象となる(水災保証付き)というのがありましたが、保険の適用については定かではありません。擁壁のある家の所有者は一度保険会社に確認されるといいでしょう(あっ、うちも該当する!)。
他方で、崖下の家の住人としては、擁壁が壊れそうなときには、擁壁の設置してある土地の所有者に、妨害予防請求権による予防措置を求めることができます。
ただし、現実にこれを裁判で求めるとなると、具体的に考えてみるとなかなか難しいです。
擁壁が壊れそう、土砂崩れしそう、ということを裁判官に納得してもらうには、擁壁がどのような状態となっている場合に、予防措置をせよ、という勝訴判決が取れるのか。
専門家の意見書などで立証するのでしょうが、誰が専門家なのか。
土木の専門家だって、今後の激しい気象については予想できないでしょう。
専門家としても、何年間の間に何%くらいの確率で倒壊しそう、と評価するのでしょうか。
いつ倒壊してもおかしくないというときにはじめて妨害予防請求ができるのか。
さらに今後、所有者不明土地問題が加わってくるでしょう。
今後、何代にもわたる相続登記未了土地、相続放棄による所有者のいない土地、こうした状況が益々増えると思われます(相続登記の義務化が検討されていますが)。擁壁のある土地がそうなる可能性は多分にあります。売れない土地は、放置されていくからです。
崖下の住人としては、頭の痛い問題です。
一応、民法には相続放棄後も相続人の管理責任を規定した条項があるのですが、これにより工作物責任が問えるのか、という問題はまだ答えがありません。
国交省は否定的な見解を出しています。裁判所がどう判断するのかは今後の判例の積み重ねを待たねばなりません。
札幌は崖地の住宅が少ないけれど、小樽には一定数ありそうです。
横浜で判例が集積しそうな印象です。崖地の住宅が多いのと、裁判するだけの価値のある地価だからです。
先日行った長崎も凄いところに家がたくさん建っていました。