ここのところ、国政に関することばかりを書いていましたが、ここ数日、興味を惹くローカルな新聞記事が2つありましたのでお伝えします。

まずはトランジットモールについて。

本日づけポートランドトリビューン紙は、トップの話題がトランジットモールとダウンタウンの違法駐車取締についてでした。http://www.portlandtribune.com/archview.cgi?id=32204

ご存じのとおり、ポートランドには、MAXというライトレールと、ポートランドストリートカーの2種類の軌道交通があります。このうちMAXは、昨年春に開通し、上田市長も試乗した黄色線に続き、緑線の新設が計画されています。市域の東端を南北に(I-205沿い)走り、既存路線を通ってダウンタウンに入り、現在バスのトランジットモール(一部のみ)となっている道路上を通ることが予定されています。

面白いのが、下記のリンク(control+クリック)のシミュレーションビデオです。http://www.trimet.org/portlandmall/video.htm

車線の増減があり、バスが軌道上を走る部分や、一般車両の車線の状況など、具体的にイメージできるようになっています。既存の建物も作り込まれ、なかなかの力作です。実際には、このビデオのようにスマートにはいかず、太ったバスドライバーが、ディーゼルエンジンをブオブオ言わせながら、不器用に車線変更のタイミングを伺うことでしょう。これを見て、石塚事務所の皆様は札幌編の作成準備に取りかかって下さることでしょう。

上記の新聞記事は、駐車取締員にスポットをあて、その実情に触れるとともに、路上駐車料金の値上げによるトランジットモール改修財源の確保について解説しています。取締りは、商工会が委託を受けていますが、記事によれば、係員には、それなりに裁量が与えられているようです。日本では、民間委託にあたり、公平を期するために即アウト方式が検討されているそうですね。ポートランドでの今回の値上げは、現在1時間あたり$1から$1.25へ、現在午後6時以降無料であるところ、7時以降とすることとなり、これにより、年間$3.2 million(約3億6千万円)の増収を見込んでいるとのことです。

MAX新設も含めたトランジットモール改修費用は、全体で$165 million。そのうち$50.3 milを市が負担します。市はどこから用意するかというと、$19 milを路線付近の土地所有者からの徴収(うち$7 milはポートランド州立大学)、$15 milを公債(駐車違反増額分で償還)、$10 milを市再開発委員会、$5 milを市上下水道費、$1.3 milをPortland systems development charges(市の公共事業担当業者から集められている費用)から賄うとのことです。グレシャム市とダウンタウンを結ぶ最初の路線は、連邦の高速道路予算だったものが、その後の延長、新設については、徐々に市の負担が増え、路線の新設にあたっては賛否両論の市民議論があったようです。着工は2006年秋、完成が2009年9月と予定されています。

つぎに、メージャー37について。昨年秋の大統領選投票と同時に、この住民発案による州法についての住民投票があり、6割ほどの賛成を得て成立しました。これは、州や市による土地利用規制を受けた土地所有者が、合衆国憲法の保証する範囲を超えて、補償を受けることができるとする法律です。このことは、昨年末にお伝えしたかと思います。

先週金曜日10月14日、州巡回裁判所は、当該州法をオレゴン州憲法、合衆国憲法に違反するものとして無効と判断しました。

http://www.friends.org/

(当該立法に反対してきた土地利用規制擁護市民団体1000フレンズオレゴン)

実は、同じような法案は、過去にも住民から発案され、住民投票にかかり、賛成多数を経て成立したことがありますが、これも裁判所により無効とされました。オレゴン州は、ポートランドに集中する都市住民は革新的な政策を支持するのに対し、それ以外の地方は農業が主力産業であり、住民は保守的な政策を支持します。人口バランスから革新が多数となっています。地方の土地所有者は、権利を保持しようと、一部の法律家も含んで、違憲無効判決を受けても、何度も住民発案を果敢に行ってきました。

今回の成立した法律案(M37)もいろいろ問題があり、我が校でも反対論(つまり州の土地利用制限推進論)、違憲無効論の声の方が大きい感じでした。もっとも、学長と教授の公開討論がなされ、環境保護派が圧倒的多数の我が校では、これまでのオレゴン州のラディカルな土地利用制限を支持する声が大きい中、賛成派の学長が主張する公平論の方が単純でわかりやすい感じがしました。そして、住民投票では、どこまで住民が問題意識を持っていたかはわかりませんが、賛成多数という結果となりました。そして、今回の違憲無効判決です。当然控訴されています。州裁判所だけでなく連邦裁判所にも行くでしょう。直接民主主義も一筋縄にはいきません。

米国全体の交通計画に対する住民参加については、(財)自治体国際化協会が詳しい論文を掲載しています。まだ読んでいませんが、リンクを貼っておきます。

http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/cr265m.html

私の通うルイス&クラーク大学は、ポートランドの南西の丘の上にあり、公共交通は貧弱です。唯一の公共バスは、ダウンタウンまで直通で行くことができず、頻度も低いです。この路線は、廃止の方向で検討されています。大学を通して学生全体にメールで通学態様についてのアンケートをするなどした結果を受けての判断のようですが、Tri-Met職員が大学にも説明会に来ています。明日はロースクールに来て、廃止以外のオプションについても意見交換が予定されているようなので、参加してみようと思います。

大学は、シャトルバスを運行しています。これは、ロースクール内の環境保護団体が、大学と交渉した上で実現したものであるとのことです。この団体は、自転車通学者に対し、シャワー用のタオルを貸し出すシステムを運営したり、自転車通学距離コンテストなどを主催しています。また、自動車の相乗り制度(相乗り者用駐車許可証、専用駐車場など)も運営しています。他方で、大学に対し、駐車場の拡張を阻止するべく行動したりもしていて、感心です。

このように、市民社会民主主義は手間がかかります。私は指向しますが。それにしても、新聞やウェブサイトで上記のような情報がたやすく手に入るのはさすがオレゴンですね。

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