石塚さん。

吉岡さんから一昨日「参加の場をデザインする」が届き、今読み終えたところです。

?ホームページでコラムを拝見した際は、行政マン向けと認識していましたが、改めてまとめて読むと、参加市民側からも、裏側が見られるようで、行政の場でのワークショップの意義の理解ができると感じました。歯切れの良い、かつ肩の力の抜けた文章は、とても読みやすく、好評を広く得ることでしょう。

?月寒の事例での、「合意は正しかったのか」という問いかけは、民主主義の根元的な問題であると思います。そのために、間接民主制があるのだとも思います。「開かれた選挙をしたから良しとしよう」ということです。これも完全でないので、住民参加などのメニューが補完するのではないでしょうか。

山口二郎教授にも何らかのワークショップに継続参加してもらい、その評価検討を論考で発表してもらいたいところです。ついでに宮脇教授にも。

?6月に上田市長のポートランド市の環境政策のヒアリングに参加した際、職員はneighborhood association(町内会)を通じての意見吸い上げ、合意形成することを説明していました。

ここオレゴンでは、この町内会がかなり密なようです。意義としては、資産価値を守ることが第一なようで、不動産評価の日本との相違がコミュニティ形成にも影響を与えています。残念ながら、私は単身者の多いアパート群に住んでいるので、町内会に属しておらず、中身を実体験できません。

もっとも、所属しているZ car club(日産フェアレディZの愛好会)のミーティングでは、いちいちしつこいくらいの議論、決議により、クラブの行為が決定されていきます。こんなところにも、コミュニティの違いが現れているように思います。

?プランナー、コンサルタントという仕事については、未だによく見えない部分ではありますが、オレゴンでは何でも住民説明会、各種委員会ヒアリングでのプレゼンテーション等が必要なので、プランナーは大きな役割を担っているようです。後者は、異議申立手続き及び裁判と直結しているので、ランドユースを専門とする弁護士が担っている部分があり、プランナーとの連携作業が日常的だとのことです。また、建物の申請手続きと都市計画の申請手続きは明確に分かれており、前者には弁護士は(プランナーも?)関わらないそうです。

石塚さんの著書で、受付、表情、うなづきなどのポイントが解説されています。都市計画家協会主催の一連のイベントに参加して感じたことですが、理系の性が出てしまうのか、会員の決定的なコミュニケーション力不足を感じます。行政マンの方が表情豊かです。岩波新書の「ワークショップ」という本は、広告マンが書いていますよね。また、最近面白くて気に入っているHP(http://www.kohoman.com/tt/index.htm)は、心理学をベースにコミュニケーションを分析しており、ビジネス上の重要性を指摘しています。経済的利害関係が無い分、地域の問題によりあてはまると思います。昨年の連続シンポ(環境財団・札弁2日目)でパネルとして参加した手塚さんが、ドイツでの都市政策の合意形成手法で心理学の専門家が関与していることを指摘しています。客商売をしている私自身不足していると自認している点ですが、是非若手プランナーの皆さんは、石塚手法を体得していただきたいものです。

?話しは、多少ずれてしまいますが、本の間に挟まっていた学芸出版の新刊広告を見ますと、倉田先生がカルソープの本の訳書を出されています。私自身、学芸出版の本をいくつか読み、またポートランドに興味を覚えるにつれ、カルソープの存在、主張、実現に興味を持つに至っています。出国前に、原書を取り寄せてみたりしました。しかしどうでしょう。当地では、専門外の外国人のところまでは、その名前は聞こえてきません。私の履修したランドユースプランニング(法)のケースブック(判例を題材とした教科書)では、TOD(Transit-Oriented Development)については、その効果に疑問があるとしています。訳は以下のとおりです。

「TODはスプロールに役立つか?- TODは、交通をサポートし歩行者に優しい環境を造ることにより、重要な地域の利益をもたらすと考えられていた。近時の分析では、都市交通体系の地域に与えるインパクトは、今後の投資が既存体系の周辺になされるため、将来減少していくとされている。多様な雇用形態の世帯、労働時間の減少もまた、通勤コストの減少の動機付けとなる。1999年4月24-28日のAmerican Planning Association National Planning Conferenceに向けて用意されたNiles & Nelson, Measuring the Success of Transit-Oriented Developmentは、地域スケールでのTODは、たとえ大規模な交通投資がなされても、地域の利益を創出したといえるには、根拠が不十分であるとする研究を引用している。例えば、サンフランシスコベイエリアでは、9%の住民が駅から800m以内に住んでいるところ、その内のわずか18%しか軌道交通を通勤に利用していない。Giuliano, The Weakening Transportation-Land-Use Connection, 6 Access 3-11(Spring 1995)も参照せよ。」以上Daniel R. Mandelker, John M. Payne / Planning and Control of Land Development: Case and Materials 5th edition, p693より。

これを目にしたときは、そんな殺生な、と思いました。こちらは、TODが地域にプロフィットを創出することの根拠を見るためにわざわざPortlandに来ているのに、と。カルソープは、民主党と強い繋がりを持っているそうですので、現在は流行っていないのかもしれません。ここオレゴンでは、俄然民主党が強いですが、全米トップの失業率となっています。MAX黄色線及びPortland Street Carの延長は進められていますが、やはり大規模な財政支出に不満の声も多く聞こえます。

前回の報告でも紹介しましたが、ポートランド市域の土地政策の最大の特徴である、Urban Growth Management(UGB、都市成長管理)も、住民発案、住民投票の結果、骨抜きにされそうな状況です。線の外の土地所有者は、建築制限の補償を求めることができるようになったため、土地利用制限政策が財政を逼迫させることが明らかだからです。

民主主義は大きく揺れ動きます。アメリカはその価値に賭けている国家ですが、それを構成している住民は、日本ほど十分な教育を受けているわけでなく、情報発信は多様ですが、その取捨選択の状況も様々です。私のように新聞を読まず、ニュースもそれほど見ないアメリカ人はたくさんいると思います。
こちらに来てすぐに、伊藤組USAコーポレーションのGMの方をお話する機会がありました。アメリカ社会の不合理さをしきりに訴えていました。企業派遣で来ている方々は、どうも自発的に勉強しに来た人達よりも、アメリカのあらが目に付くようです。しかも会話のネタにします。上田市長も同時期にちがう機会に同氏と話しをしたそうですが、ポートランドのいいところを取り入れようという我々の発想からすると「ぜんぜん話しが通じないね。」とのことで、漏らしていました。

同社に何人の従業員がいらっしゃるか知りませんが、姉妹都市交流の日本側窓口として強力な地位にあるので、石塚本とLRT3冊を寄贈しようかと思っています。同社の誰かが興味を持ってくれたら成功です。効果はありますでしょうか。

?最後に、札幌ミュンヘンクリスマス市で、食器洗浄機あらえーるが出動したことを、ウェブシティ札幌の記事で知りました。弁護士1年目、2000年4月ドイツ視察後、2001年3月実施のシンポの企画、パネルディスカッションのコーディネーターを務めた主題が、ミュンヘンをまねた「イベントでのリターナブル容器の利用」です。あのときに、札幌市の職員の方も熱心でオープンマインドな人がいるんだなと認識しました。米森さん(LRT)に食品衛生の要綱を問い合わせたところ、要綱が改正されたということもありましたね。ありがとうございました。今のところ、自称環境派弁護士として、「**差止訴訟」等の「異議申し立て」型の目立った経歴の無い私ですが、このまましばらく「提案」「協調」型で、このフィールドを追求してみようと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA